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カフ・ボックス 「マルタ」より 夏の名残のバラ (庭の千草)

被災者の方や不安な気持ちで過ごしている方々に、少しでも元気になっていただきたいと願って、オルゴールやオートマタの映像をYouTubeに応援投稿しています。

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今日はアメリカ、オットー・アンド・サンズ社のキャピタル・カフ・ボックスの演奏で、「マルタ」より 『夏の名残のバラ』です。

日本では「庭の千草」で知られている曲です。
この曲は、アイルランドの国民詩人として名声を博したトマス ムーアの美しい詩に、ジョン・スティーブンソンが曲をつけたものという説と、アイルランド民謡にトマス ムーアが詩を付けたという説があります。
しかし、面白いことに19世紀のオルゴールでは、ドイツの作曲家フロトーのオペラ「マルタ」*1の『夏の名残のバラ』という表記が一般的です。
つまり、作曲家のところにフロトーと書かれているのです。
それはスイスで作られたシリンダー・オルゴールでも、ドイツやアメリカで作られたディスク・オルゴールでも同様です。
きっと、当時のヨーロッパで『夏の名残のバラ』はフロトーの「マルタ」によって広まったのでしょう。

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この機種はソフトの形が変わっています。
博物館6階のソフトの棚では中央上から6段目に収納しているのですが、「あれは何ですか?」と必ずと言っていい程、質問される異彩を放った色と形などです。
アップで見てみると・・・。

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ブルーあり、ゴールドありです。
大きい方の直径約11cm、長さ約19.5cm。(タイプC)
シャツの袖のような形をしているのでカフ(cuff)と名付けられました。
アメリカのオットー アンド サンズ社がキャピタルというブランド名で1895年頃に売り出したオルゴールです。
形はシリンダーに似ていますが、カフを換えることができ、機能はディスクに似た珍しい形。
スター・ホイールを用いて櫛歯を弾く構造はディスクと同じです。
普段はディスクの裏側に隠れて見えない、スター・ホイールが櫛歯を弾く様子が良くわかります。

カフで演奏するオルゴールなので、カフ・ボックスと呼ばれるようになりました。

*1:『マルタ(正式名称:マルタまたはリッチモンドの市場)(Martha oder Der Markt zu Richmond )』は、フリードリッヒ・フォン・フロトー作曲の4幕のオペラ。初演は1847年11月25日、ウィーンのケルントナートール宮廷劇場。