現在開催中の企画展「実際の音色でたどるオルゴールの歴史展」。
今回の企画展で「オーケストラル・ボックス」と呼ばれるオルゴールを演奏しています。
オーケストラル・ボックスとはベルやタイコやオルガンなど、様々な楽器が組み込まれたシリンダー・オルゴールです。
今回演奏しているは、スイス製のオルゴールなのに、日本の曲が収録された、ちょっと変わったオーケストラル・ボックスです。
企画展で演奏している曲は「チョンキナ」という曲です。
日本の曲なのに今ではほとんど知られていない曲。
何故この曲を選んだかというと、所蔵ディスクの中にも「チョンキナ」という曲があるからです。
ポリフォン 19 1/8inchのディスク番号 5602「ザ・ゲイシャ」よりチョンキナ
ディスクに収録されている「チョンキナ」は、イギリスの作曲家シドニー・ジョーンズの「ザ・ゲイシャ」というオペラのなかの1曲です
「ザ・ゲイシャ」は1896年、かの有名な「蝶々夫人」が作られる前に日本を題材として作られたのオペレッタ(喜歌劇)です。
劇中では「チョンキナ」は芸者に化けた英国娘が「チョンキナ・チョンキナ・チョンチョン・キナキナ・ナガサキ・ヨコハマ・ハコダテ・ホイッ!」と歌うのだそうです。
さてこの「チョンキナ」、国語辞典には、
『狐拳(きつねけん)の一。合いの手に「ちょんきなちょんきな、ちょんちょんきな、ちょんがなのはで、ちょちょんがほい」などと唱えながら、その声が終わるのを合図に拳を打つもの。』
更に、「チョンキナ踊り」は『横浜の外国人客相手の女郎が、洋酒屋の座敷で踊ったもの。三味線で踊りながら「ちょんきな」の拳を打ち、負けると着物を脱いでゆく遊びで、横浜名物とされた。』とありました。
また「ロマン派音楽の多彩な世界」という本に、もともとはイギリス人にジョンという名が多かったから、ジョンが外国人の代名詞のようになって「ジョン来な。ジョン来な。ジョンジョン来な来な。長崎、横浜、函館、ホイッ!」と安政の開港で開かれた港名を歌ったと。
このような俗唄はYouTubeなどで調べても、なかなか出てこないのですが、ありがたいことに「唄本から見た明治の流行り歌 俗謡編」 というHPで唄を聞くことができました。(ページの下の方の唄ってみようをクリックすると聞けます。)
実際に歌われた「チョンキナ」と100年以上前に日本の曲としてオルゴールに収録された「チョンキナ」。
また、イギリス人が作曲したオペラのなかの「チョンキナ」。
ぜひぜひ、聴き比べてみてください。
実は、オーケストラル・ボックスには「チョンキナ」と「再チョンキナ」と2曲が収録されています。
("再"って何って?って感じですが・・・)
聴き比べてみると、チョンキナチョンキナのフレーズをただ繰り返すのが「再チョンキナ」で、西洋風?アレンジを加えたのが「チョンキナ」という感じがしませんか?