6月23日のブログでご紹介したピアノ曲、『夜のガスパール』についての続きです。
『夜のガスパール』3曲はそれぞれ別の人に献呈されています。
第1曲『オンディーヌ』はハロルド・バウアー(Harold bauer)、
第2曲『絞首台』はジャン・マルノール(Jean Marnold)、
第3曲『スカルボ』はルドルフ・ガンツ(Rudolph Ganz)です。
この3人のうち、バウアーとガンツは自動ピアノでよく登場するピアニストなので、私たちにも馴染みがあります。
ハロルド・バウアー(1873~1951)(Wikipediaより)
ルドルフ・ガンツ(1877~1972)(Wikipediaより)
彼らに献呈していたと知り、作曲者と曲とピアニストがぐっと近くなったような気がしました。
バウアーやガンツがこの曲の演奏を残しているのではないかと調べたのですが、残念ながら見つかりませんでした。
デュオ・アートだけでなく、他のリプロデューシング・ピアノ「ウェルテ・ミニヨン」と「アンピコ」も調べてみたのですが見つかりません。
献呈された人が演奏し、ロールにはピアニストと作曲者の両方のサインを入れ、作曲者のコメントなどもつけたらおもしろかったのに。
もう一つ興味深い話は初演についてです。
1901年に『夜のガスパール』を初演したのはリカルド・ビニェスです。
彼は他にもラヴェルの曲を多く初演しています。
また、作曲のきっかけとなったベルトランの詩集をラヴェルに紹介したのもビニェスでした。
しかし、ラヴェルはビニェスが演奏した『夜のガスパール』をあまり快く思わなかったようで、特に第2曲はラヴェルの意図に反した演奏で、弾いたビニェス自身も退屈に感じていたそうです。
これを境にビニェスがラヴェルの曲を演奏する機会は少なくなっていきました。
感情的なことだけでなく、ラヴェルの作風がビニェスに合わなくなってきたことも原因のようです。
そこで今回の演奏です。
ピアノロールのラベル
曲目の下に「Played by the Composer」とあります。作曲者が演奏した、つまり弾いているのはラヴェル本人ということです。
きっと彼がイメージした演奏が聴けるのでしょう。
作曲者本人の演奏が聴けるのは貴重な機会です。
感じ方は人それぞれとは思いますが、皆様はどのような印象をお持ちになるでしょうか。