今日から3月ですね。まだまだ寒く、気温の変化も激しい季節の変わり目です。お身体ご自愛くださいませ。
演奏会コースの会場 1階 音楽ホール
さて、2月23日のブログでお知らせしたとおり、今日から演奏会コースの曲目が変わりました。
スタインウェイ デュオ・アート 1920年代 アメリカ エオリアン社
今月の自動演奏ピアノ*1は、シューマン作曲 リスト編曲の『春の夜』をシューラ チェルカスキーの演奏でお楽しみいただきます。
『春の夜』は「リーダークライス作品39」の最後の曲にあたる第12曲めの歌曲です。
そもそもリーダークライス(Liederkreis)ってのはドイツ語で、連作歌曲*2と訳されます。
シューマンは2集のリーダークライスを作曲していて、ハイネの「歌の本 Buch der Lieder」から9編の詩を選んで作曲した作品29と、この作品39があります。
リーダークライス作品39は、1840年にシューマンが、ドイツ・ロマン派の詩人ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフの詩に曲をつけた歌曲集なのです。
Robert and Clara Schumann 1847
1840年といえば、それまでピアノ曲ばかりを作曲してきたシューマンですが、愛するクララとの結婚をきっかけに、歌曲の作曲に熱中しちゃった年です。
わずか1年ぐらいで、「ミルテの花」「詩人の恋」「リーダークライス作品24&39」「女の愛と生涯」などを続々と作曲したので「歌の年」とも呼ばれています。
恋すりゃ素敵な詩に感銘を受けるし、歌いたくもなっちゃうって感じでしょうか?
『春の夜』も歌曲ですから、歌詞があります。ネットから捜してきました。
花園の上の空をとんでゆく
渡り鳥の声を、私は聞いた、
その声は春のおとずれを告げていた、
下界では、はや花も咲きそめていた。
私は歓呼したかった、泣きたかった、
まるであり得ないことのような気がして!
古い奇蹟が、月の光とともに
いま一度地上にさしこんだのだ。
月と星はそのことを語り、
森は夢みながらそのことをつぶやき、
夜鶯もそのことを歌っている―
「あのひとはお前のもの、お前のもの」と! (訳:西野茂雄)
Franz Liszt 1840 Charles Laurent Marechal (1801-1887 French) Pastel Wagner Museum, Bayreuth, Germany
このロマンチックで穏やかな『春の夜』に「ピアノの魔術師」とよばれたリストが編曲したのが今回の演奏曲です。
リストの編曲は、原曲をピアノで弾けるように直すといった単純な編曲ではない場合が多く、独自の展開を加えたり、豪華な装飾を加えたりして、華麗なピアノ曲へかえてしまいます。
『春の夜』では1分半ほどの原曲を倍以上の長さに拡大してドラマティックな世界を創り上げてしまいました。
このロマンチックで華麗な曲を若き日のシューラ チェルカスキーが演奏します。
20世紀最後のヴィルトゥオーゾ*3のひとりで「音の魔術師」と呼ばれたシューラ・ チェルカスキーどのように弾きこなすのか?
只今演奏中です。ご来館をお待ちしております。
*1: スタインウェイ・デュオ・アート:1920年代アメリカのエオリアン社が製作した自動演奏のピアノ。紙のロールを音楽用ソフトに用い、ピアノストの演奏を再現することができるリロデューシング・ピアノのこと。
*2: 連作歌曲:各曲の間で文学的・音楽的な関連性をもって構成された歌曲集。(英語:song cycle )シューマンの作品の場合は「連作歌曲」と訳さずにそのまま「リーダークライス」と呼ぶ。
*3: ヴィルトゥオーゾ:演奏の格別な技巧や能力によって完成の域に達した、超一流の演奏家を意味する言葉