プルップルップルップルッ、プルップルップルップルッ、ではない。
プルルルルル、プルルルルル、である。
“プ”が多い前者は内線電話で、“ル”が連続する後者は外線電話。
1Fの受付を1人で任されるようになった私にとって、
“プ”が多い内線電話が自分のところで鳴るたび、
「何かまたミスをしたのではないか」と不安になる。
でも、昨日の朝は外線電話がひっきりなしに掛かっていたので、安心だった。
私のために内線を使っている暇など微塵もないからだ。
それもそのはずで、クリスマスコンサートの予約が始まった。
先輩たちは、朝から臨戦態勢。
5Fの電話機も延長コードでつなげて、
4Fの事務所に直接持ってきてしまう異例の事態である。
非常階段には黒い電話線が、重力に抗うことなく垂れ下がっていた。
私は先輩の苦労を尻目にして、
いつもの朝を過ごそうとしていた。
自分の持ち場である1Fレジへ呑気に下りていった。
10:50ごろ。
私は完全に安心し切っていた。
このとき、“頭のゼンマイ”もまだ巻かれていない。
ひとりの男性が、入り口のドアを開けて中に入って来た。
「今日の午前中は博物館コースがないのに・・・・・」と
頭に浮かんだが、お断りの文言を考える間もなかった。
2Fのショップから先輩が階段で下りてきた。
なぜだか妙にかしこまっている。
先輩は、私を見た。
入ってきた男性が口を開いた。
「君が、新しく入った子だね。ブログを読んだよ」
館長だった。
初めてだった。
パンフレット記載の館長コース*1の説明を思い出した。
一体どんな人物なのか、不思議に思わないわけがない。
朝の掃除で、7F応接室の机の上のモノが微妙に動いていることは確認していた。
足を運んでいるとは推測していたのだが、現実に会えるとやっぱりうれしい。
先輩が予約を取っている間、
またしても、“大きな発見”をしてしまったのである。
プルップルップルップルッ、プルップルップルップルッ。
“プ“が多くなった。
午後からは、また内線電話が鳴った。
そういえば、館長はあれから一向に降りて来なかった。
やっぱり幻だったのか。
「社員通用口から帰って行ったよ」と先輩が教えてくれた。
次はもう少し話してみたい。
(新)
*1:「オルゴールの収集家であり研究家の館長が博物館をご紹介します。
特別展示室へはこのコースのみ。時間無制限。マニア向け。」と書いてある