1835年頃、スイス製のミュージカル・スナッフ・ボックスです。
スナッフ・ボックスとは微粉末状にしたたばこを直接鼻から吸う「嗅ぎたばこ(スナッフ)」を入れる箱のこと。
メーカーは不詳。
5本組の櫛歯が13枚と何故か6本組の櫛歯が1枚が音程順にならびネジで止められています。
まだ一枚の板から何本もの歯を削り出す技術が難しかった時代には幾枚もの小さな櫛歯を用いていました。
このような櫛歯はセクショナル・コム(組み合わせ櫛歯)と呼ばれています。
箱の全面にマザーパールの2つの操作ボタンがあり、左がスタート・ボタン、右が曲目変換ボタンになっています。
右のボタンを左右に動かすことで、2曲入りのオルゴールの演奏したい曲を選べます。
さて、このオルゴールのケースは水牛の角を加工した素材で作られています。
これはプレスドホーン(Pressed Horn)と呼ばれていて、動物の角の柔らかい層を熱で柔らかくし、型に入れて成形した素材。
17世紀ぐらいからあり、スナッフボックスとしては1700年頃には作られていたという記録があるようです。
(その頃のスナッフボックスにはオルゴールはついていませんが・・・)
漆黒のケースの上蓋には風景と[Porte Ficinese a Milan]の文字が彫刻されています。
YouTubeに動画をアップする際に録画をしていて、今更ですがこの絵のことがとても気になりました。
[Porte Ficinese a Milan]とはミラノのティチネーゼ門のこと。
オルゴールにはFicineseとありますが、現在はTicineseと表記するようです。
1901年に撮影されたティチネーゼ門。
当たり前かもしれませんが、なんと同じ絵で嬉しくなってしまいました。
更にGoogle Earthで調べてみると、現在のティチネーゼ門です。
オルゴールが作られて約180年。
現在も街のなかに当時描かれていたものが普通にあるのがヨーロッパの凄いところですね。
いつかイタリア、ミラノを訪れる機会があったら、絶対に見に行こうと心に決めた今日この頃です。
このオルゴールは現在「暮らしのなかのオルゴール展」で実演中です。
大塩平八郎の乱が1837年、そんな時代に作られたオルゴールの実際の音色が楽しめます。
是非ぜひ聞きにいらしてくださいませ。
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