バレルを使用した自動ピアノのシステムは16世紀から存在していた。1547年のヘンリー8世王の死後に残された所有楽器の目録にはバレルを使用した3つのスピネット(小型のチェンバロ)が存在する。バレル・ピアノが商品化されるのは19世紀になってから。イギリス、ブリストルのヒックス・ファミリーにより広められた。ヒックスはバレル・ピアノやシリンダー・ピアノのメーカー。なかでもロンドンのジョン ヒックスは1805年頃に初めてストリート・バレル・ピアノを製造したことで知られている。
バレル・ピアノは鍵盤なしのものが多く、手廻し式のものやゼンマイを使用したものが多い。演奏時間が短く、バレルに曲を記憶させるのも手作業で、ロールペーパーを使用する空気式のピアノほど大量に普及はしなかった。
この機種は木の円筒(バレル)にピンを植え込み曲を記憶させる。ハンドルを回すとバレルが回転し、バレルに埋め込まれたピンがハンマーを持ち上げ24ノートの弦を叩いて演奏する。このバレルには7曲(溝は8曲分あるが1曲目はブランク)の曲が収録され、曲の変換はバレルをずらし込んで行う。バレルの軸に刻み目があり希望の曲に刻み目に金具をセットして固定する。このような機種はかつてロンドンやその他の都市の街角で人気があり、持ち運び用の革ひもが付き商売道具として用いられていた。街に持ち出され演奏していた為にストリート・ピアノとも呼ばれる。
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