ビスクヘッドはおそらくマダム ユレの作品。
豪華な衣装をまとったカップルが、時には早く時にはゆっくりと流れるように円を描き、ムーブメントと回転を繰り返しながら華麗にワルツを踊る。女性のドレスのなかにメカニズムが組み込まれた木製のベースが隠されている。ベースには3つの車輪が付き、先頭の車輪が方向を支配し、後方の2つの車輪で駆動し、人形を移動させていく。「A. THEROUDE PARIS」「Brevete S.G.D.G」と書かれた2つの飾り板が付いている。約150年前に活躍したテルードの作品は現存数が少ない。
婦人は微笑んだ閉じた口と固定されたガラスの眼を持ち、コルクの頭にモヘアのカツラを付け、紫のシルクのドレスを着ている。紳士は金糸の縁の付いた緑色のコートと黄色の裾の暗褐色の乗馬ズボンを付けている。共にドレスはオリジナル。
Theroude(テルード)
アレクサンドラ・ニコラ・テルードは1831年に玩具工房として創業。最初は安価なドイツ製の輸入玩具を扱っていたが、 1840年の破産を機に独自の大型オートマタ製作を開始する。1849年のパリ産業博覧会では「当代きってのからくり玩具作家」と賞賛を浴び、その後20年間は万博の人気者となる。絶頂期にあっても慢心せず、膨大な特許申請を行い、常に高い水準のオートマタを作り続けた。1871年普仏戦争が引き金となって、テルードは2度目の破産を余儀なくされ工房を閉じる。
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